ひっかけ橋(戎橋)から徒歩2分、御堂筋から徒歩1分にある、道頓堀キムラ歯科クリニックの院長の木村沢郎です。
9月14日は阪神タイガースの優勝という大イベントのため、御堂筋と戎橋、難波は大変な騒ぎになっていました❗️写真の警察車両や機動隊バスがそこら中にあって、警察官が5歩歩くと立っているぐらいに厳戒態勢でした。今回の対策で警察車両は60台以上、警察官の人員は約1300名ほど投入されたみたいです。そのおかげで、人は多かったですが思ったほどの騒ぎにはならなかったみたいで、平和な中阪神タイガースの優勝を町中が喜んでいました☺️
前回はシニアの方の健康での後悔ナンバー1である、「歯を失った時の治療」のお話をしました。その時の治療としてベストは選択肢は、「矯正治療」や「歯牙移植」でご自身の歯を生かす治療になります。しかし、不要な親知らずや矯正治療の適応でない場合も多くあります。その場合は、他の治療を選択する必要があります。
歯を失った時に治療方法として、「矯正治療」と「歯牙移植」以外に、「ブリッジ」と「入れ歯」、「インプラント」があります。今回はこの中の「ブリッジ」について説明をしていきたいと思います。
「ブリッジ治療ってどんな治療ですか?」
ブリッジとは「橋」のように、歯を失った隣の健康な歯を支えにして、人工の歯を繋いで失った歯を補う治療法です。保険の治療の中で一般的な治療であり、治療方法をご存知の方も最近は多くいらっしゃいますね🎵
一般的な保険治療のブリッジは、隣の健康な歯を削り、歯を失った前後の銀歯同士が繋がった補綴物を装着します。
保険治療では、3番目までの前歯とブリッジを支える4番目の歯、歯を失っなったポンティックと呼ばれる部分のみは、銀歯の表面に白いプラスチック(レジン)を銀歯に貼り付けることができます。(レジン前装冠)
ただあくまで銀歯なので、平均的な寿命は短く非常に虫歯になりやすい特徴があります。また白いプラスチックは、時間とともに劣化と着色が進むので、見た目が年々悪くなってくることも欠点のひとつですね。
『ブリッジ治療のメリット』
- 入れ歯と異なり、固定性のため取り外しをしなくても良く、違和感・異物感が少ない。
- 保険で治療ができるため、比較的安価で治療ができる。(例 前歯1本欠損の3本のブリッジ3割負担で、1万×3本分円前後の治療費になります)
- インプラントなどの治療に比べると治療期間が比較的短い。
『ブリッジ治療のデメリット』
- 歯と被せ物の隙間が、1本の被せ物よりも大きくなる可能性が高く、虫歯のリスクが高い。
- 虫歯に気付きにくいため、問題が起こるときには虫歯が大きく歯を抜かないといけない場合がある。
- 神経が残っている歯をブリッジの支えにした場合は、歯がしみたり、強く痛む場合がある。
- 歯の傾きが異なる場合や神経が近い部分を削る場合は、神経の治療が必要な場合がある。
- 歯を歯の隙間が大きいため、食べカスが詰まりやすい。
- 保険の銀歯が溶け出し、歯茎に入り込んで歯肉が黒く変色してしまうことがある。(メタルタトゥー)
- 前歯のレジン前装冠は、使用を続けると黄ばんで変色して、審美性が悪くなる。
- 銀歯とプラスチックの素材のため、汚れは細菌(プラーク)が付着しやすい。
- ブリッジの土台となる歯に負担が強くなることで、歯が割れたり、大きく揺れたり、土台となる歯の寿命が短くなる。
→保険のブリッジの治療は、ブリッジの支えとなる歯の寿命を大きく下げてしまう可能性が高い治療方法であると言えるかもしれません^^;
「なんでブリッジは良くないの?」
銀歯を被せるために健康な歯を削ることで、歯は虫歯に非常に弱くなります。
歯を守っている、身体の中で一番硬いエナメル質を取り除いてしまうことが大きな要因です。象牙質は水分がエナメル質よりも多く、硬度も高くありません。象牙細管という管状の構造が集まっているため、虫歯の侵入に弱いと言えます。被せ物のタイプのブリッジでは、象牙質を覆って守っている「エナメル質」と「象牙質」を削りますが、健康な歯を削る場合は歯の健康な歯質を63%~73%を失うとの報告があります。(参考:文献1、2)
単独の銀歯の平均寿命が8年ほどですが、銀歯を被せている歯が虫歯になる時は、象牙質と銀歯の間にある接着剤が溶けて、虫歯が進んでいきます。その進行はエナメル質が残っている歯よりも早く、神経が残っている歯では一気に神経まで虫歯が進むことも多くあります。神経を取っている歯においても、神経が残っている歯よりも歯が脆くなっており、またまた虫歯が進行しても痛みを感じることは少ないため、気付いたら時には歯を抜かないといけない状態まで虫歯が進んでいる場合があります。
ブリッジの場合は一つの歯の虫歯がすすんでも銀歯が外れないため、そして気付かれないままに虫歯が内部で進むため、ブリッジの虫歯は歯を失うリスクが高くなります。
ブリッジに関わらず、歯を長持ちさせるための基本的な原則は、歯と歯を繋がないことが大切です!
『最悪のブリッジ=インレーブリッジ』
今までブリッジの欠点のお話をしてきましたが、ブリッジの場所や種類、形によっても大きく成功率が変わります。ブリッジの中でも最も虫歯になりやすいブリッジが、「インレーブリッジ」です。
インレーとは、主に歯と隣り合っている部分の虫歯を取った後に、型取りをして入れる小さな詰め物のことです。保険の銀歯のインレーやセラミックのインレーなどがあります。
(CAD/CAMインレーという、プラスチックの詰め物が最近保険適応になりました。しかし、適合が悪く、精度を上げるためには健康な歯を大きく削る必要があります。セラミックと違い、汚れも付きやすく、割れやすく、セラミックのように歯と接着することができません。個人的には、銀歯のインレーの方がまだマシだと思うので、当院では使用していません。)
そのインレー同士をブリッジとして繋げているものが、「インレーブリッジ」になります。「インレーブリッジ」は歯を削る量が少ないので、一見すると歯にとって長持ちする治療のような気がします。
しかし、保険の銀歯のインレーブリッジは、ブリッジの欠点を集めたような治療法です。
インレーブリッジは虫歯にとてもなりやすいにも関わらず、ブリッジのため片方がつながっていると外れないという大きな欠点があります。
銀歯のインレーブリッジは、インレーという形のため歯と接触している面積は非常に少ないです。銀歯は歯をくっつかないため、接着剤がくっついている表面積が多ければ多いほど歯とつながる力が強くなります。しかし、インレー形態ではほとんど歯と接触する表面積は確保できません。
その結果、インレーブリッジは虫歯が多発します。そして、神経まで影響する虫歯が非常に多いのも特徴です。
銀歯が外れてくれた方が、虫歯の発見がまだ早いと言えるのですが、ブリッジは歯が連結されているため、片方の虫歯が進んでいても外れないことが多くあります。外れないのに、銀歯の内部で虫歯がドンドン進んでいく。ブリッジが外れる頃には、とんでもなく虫歯が進んでいる場面に多く出会います。神経が残らないだけではなく、歯を抜かないといけない場合も多くあります。
インレーブリッジをすることで歯を削る量を少なくできたという一時のメリットを取るぐらいなら、歯をしっかりと削る被せ物のブリッジの方がまだマシかも知れません。
当院ではインレーブリッジを行いません。それは歯を失うリスクが非常に高い治療だからです。
今回は、歯を失った時の治療方法の一つの「ブリッジ治療」の欠点を中心にお話をしました。次回は、ブリッジの中にもその欠点が少ないオススメできる「ブリッジ治療」の種類についてお話をしたいと思います。
長文お付き合いいただき、ありがとうございました。
道頓堀キムラ歯科クリニック
院長 木村沢郎
参考文献
文献(1)Edelhoff D, Sorensen JA. Tooth structure removal associated with various preparation designs for pos- terior teeth. Int J Periodontics Restorative Dent 2002; 22: 241–249.
文献(2)Edelhoff D, Sorensen JA. Tooth structure removal associated with various preparation designs for ante- rior teeth. J Prosthet Dent 2002; 87: 503–509.