歯のコラム

【歯に優しいブリッジがある⁉︎】歯を失った時に絶対に知ってほしいことPart3


歯に優しいブリッジ 歯を失った時に絶対に知って欲しいこと 

こんにちは。大阪難波、道頓堀川沿いにある道頓堀キムラ歯科クリニックの院長の木村沢郎です。

12月に入ってかなり冷え込むようになりましたね。僕は奈良県の生駒から近鉄奈良線で電車通勤をしているので、トンネルを越えて駅を降りると大阪よりも少し肌寒く感じます。季節の変わり目のため、患者様も体調不良の方が増えてきているので、体調にはお気を付けくださいね。

先月から御堂筋のイルミネーションが綺麗にライトアップされています。イルミネーションを見て、年末が近づいていることを改めて実感しますね♬

御堂筋イルミネーション 大阪難波 心斎橋

前回は、「歯を失った時に絶対に知ってほしいこと」としてブリッジとインレーブリッジについてのお話をしました。

インレーブリッジは歯を削る量が少ないので歯を残すための治療のように勘違いしやすいですが、中期・長期的な視点で考えると歯を失うリスクの高い治療といえます。

今までお話ししたデメリットを避けることができる特別なブリッジがあります。いくつかの適応できる条件がありますが、それは「オールセラミック接着カンチレバーブリッジ」になります。

今回は歯を残すことができるブリッジの一つ、「オールセラミック接着カンチレバーブリッジ」についてお話をしたいと思います。


「オールセラミック接着カンチレバーブリッジ」って、名前が長いですね💦

「セラミックの片側の接着ブリッジ」と言い換えた方が分かりやすいかもしれないですね。

『オールセラミック』とは、全てがセラミックで出来た被せ物のことを言います。一方、『メタルボンド』と呼ばれるセラミックの被せ物もありますが、これは内側が貴金属と呼ばれる適合性の高い金属の上にセラミックを焼き付けた被せ物のことを言います。

歴史が古く、日本人の歯科技工士である桑田正博先生が、研究と開発をされた素晴らしい被せ物です。セラミストと呼ばれる日本の歯科技工士のレベルが世界トップクラスなのは、桑田正博先生が日本での教育のためにアメリカから戻ってくれたお陰と思います。

少し脱線しましたが、メタルボンドと違い全てセラミックで作られている被せ物のことを『オールセラミック』と言います。

オールセラミッククラン メタルボンドクラウン 違い

当院の治療では、E-max(イーマックス)やジルコニアなどのオールセラミッククラウンも使用しますが、症例によってはメタルボンドクラウンも使用する場合があります。それぞれのメリット・デメリットを把握し、患者様にご理解をいただいて、最もふさわしい素材を当院では選択しています。

当院のメタルボンドは一般的なメタルボンドと違い、かなり審美的に作ってくれています。一般的にはオールセラミックよりも審美性で若干劣るメタルボンドと言われていますが、当院でお願いしている技工士さんが綺麗に仕上げてくれるので、オールセラミックと比較しても遜色がない審美的な仕上がりですね。


ブリッジの種類の一つに、『接着ブリッジ』という歯の表面のエナメル質のみを削って歯の表面に貼り付けるブリッジがあります。

『カンチレバーブリッジ』は、「偏側ブリッジ」と呼ばれることもありますが、通常は2本以上の歯をつなぐブリッジを1本のみの歯で支えるブリッジのことをいいます。

この『接着ブリッジ』を1本のみの歯で支えているブリッジのことを『接着カンチレバーブリッジ』と言います。

つまり、「オールセラミック接着カンチレバーブリッジ」とは、

歯を失っている隣の歯の表面に貼り付けた、セラミックで出来たブリッジのことを言います

オールセラミック接着カンチレバーブリッジ 接着ブリッジ セラミック片側ブリッジ
  • 「オールセラミックカンチレバーブリッジ」の生存率は高く、生存率は91%から100%(観察期間2~10年)の報告がある。(文献1)
  • 横の歯同士をつなぐ接着ブリッジの生存率は、4年後から90%を下回り、8年後の生存率は85.2%と報告がある。(文献2)
  • 接着ブリッジと従来型の被せ物のタイプのオールセラミックカンチレバーブリッジを比較すると、被せ物のタイプは67.7%(4年)、60%(2年)であるのに対して、接着カンチレバーブリッジの成功率は75%~97%(3年から10年)と高い結果が出ている。(文献3,4)

ブリッジは長期予後の成績が悪いと言われていますが、「オールセラミック接着カンチレバーブリッジ」は例外的に長期予後の成績が非常に良いと言えます♪

特徴 1.歯を削る量を最小限に抑えることが出来る

全く歯を削らずに接着ブリッジを作製する場合もありますが、強度と安定を考えると少し歯を削る方が安定します。セラミックの接着ブリッジを形成する場合は、

虫歯になりやすい歯の内側の象牙質を露出することなく、虫歯に強い歯の外側のエナメル質のみを最小限削ることで作製が可能になります。

ちなみに、被せ物を入れるブリッジの場合は、健康な歯質の63~73%を削っているとの報告があります。(論文5)

健康な歯を大きく削ることにより、神経に影響が出たり、二次カリエスなど虫歯に対して防御反応が弱くなったり、歯周病のリスクが上がるなどの大きな犠牲を払うことになります。(論文6)

接着ブリッジは歯を削る量が少なくて済むため、もし接着ブリッジに問題が起こった場合でも接着ブリッジの脱離かブリッジの破折の問題がほとんどです。

特徴2 2本以上の歯をつなぐのではなく、片方のみの歯で支えるブリッジである

被せ物を入れるブリッジでは、歯を失った隣り合う歯で力を支えるため、1本失った場合でも2本の歯で3本分の力を支えることになります。

本来支える以上の力を支えるため、いろいろなトラブルが出やすくなります。

2本以上の歯をつなぐブリッジの欠点

  • 歯が折れる場合がある
  • 虫歯になりやすい かつ 虫歯の発見が難しい
  • 歯周病になりやすい

これについては、今後改めて詳しく説明をしたいと思います。


「オールセラミック接着カンチレバーブリッジ」はどのん場所でも使えるわけではありません。片方が毛の歯で支えるブリッジのため適応できる場所が限られてしまいます^^;

条件が限られますが、上下の5番目の歯(第二小臼歯)がない場合にも適応できる場合があります。

構造上、大臼歯などの咀嚼や機能時の力が大きくかかる場所や、側方滑走時(ギリギリとする横の動き)で負担が大きい場所には適応できません。

上下の側切歯(2番目の前歯)をオールセラミック接着カンチレバーブリッジで治療する場合、その横の3番目の犬歯の裏側を支台歯(支え)とし、下の中切歯(1番目の前歯)の場合は横の側切歯を支台歯とする場合が多くあります。

オールセラミック接着管理レバーブリッジ 適応部位 上顎側切歯欠損 下顎中切歯欠損 側切歯欠損 上下顎第二小臼歯欠損

今回は、ブリッジの中でも特殊なケースに用いられる、「オールセラミックカンチレバーブリッジ」についてお話をしました。適応となる歯は限られますが、適応できる場合は積極的に考えてよい選択肢だと思います。

歯を失った場合は、

矯正治療でスペースを埋める>歯牙移植>オールセラミックカンチレバーブリッジ>>インプラント>ブリッジ・部分床義歯

この順番で治療の優先順位を考えることが、長期間機能的で安定する口腔内を維持することができると思います。

当院では、すべての患者様に対してこの考えで治療計画を立案しています。ご相談だけでも結構ですので、いつでもお気軽にご連絡ください。

道頓堀キムラ歯科クリニック

院長 木村沢郎

参考文献

文献(1)Wolfart S, Harder S, Eschbach S, Lehmann F, Kern M. Four-year clinical results of fixed dental prosthe- ses with zirconia substructures (Cercon): endo abut- ments vs. cantilever design. Eur J Oral Sci 2009; 117: 741–749. 

文献(2)Ohlmann B, Eiffler C, Rammelsberg P. Clinical per- formance of all-ceramic cantilever fixed dental pros- theses: Results of a 2-year randomized pilot study. Quintessence Int 2012; 43: 643–648. 

文献(3)Wolfart S, Harder S, Eschbach S, Lehmann F, Kern M. Four-year clinical results of fixed dental prosthe- ses with zirconia substructures (Cercon): endo abut- ments vs. cantilever design. Eur J Oral Sci 2009; 117: 741–749.

文献(4)Ohlmann B, Eiffler C, Rammelsberg P. Clinical per- formance of all-ceramic cantilever fixed dental pros- theses: Results of a 2-year randomized pilot study. Quintessence Int 2012; 43: 643–648.

文献(5)Edelhoff D, Sorensen JA. Tooth structure removal associated with various preparation designs for pos- terior teeth. Int J Periodontics Restorative Dent 2002; 22: 241–249. 

文献(6)Edelhoff D, Sorensen JA. Tooth structure removal associated with various preparation designs for ante- rior teeth. J Prosthet Dent 2002; 87: 503–509. 

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