Q. 歯の治療をしたのに、なぜ虫歯になるのですか?
A. 虫歯を治療した歯は、本来の歯よりも虫歯になりやすくなります。
虫歯を取り除いているので、再び虫歯が再発するのは不自然に思えるかもしれません。
しかし、大人の虫歯の大半はこのような治療をした後に虫歯になったものです。
歯は3層構造になっており、歯の表面はエナメル質という体の中で一番硬い組織で守られています。
虫歯でエナメル質が溶けることでそのバリアが破られ、内側にある象牙質という脆い組織が現れます。
虫歯治療で歯を削ると、バリアの役割を果たしているエナメル質が失われ、細菌に感染しやすい象牙質が露出した状態になります。
虫歯を取り除いた後に、コンポジットレジンという白い樹脂や、銀歯、セラミックの被せ物で治療してもお口の中という過酷な環境では、劣化していきます。
接着剤などが剥がれ、隙間が出来ることで、虫歯の原因菌が入り込み、知らず知らずのうちに虫歯が進行していきます。
今回は、バリアの役割をするエナメル質がいないため、象牙質に入り込んだ細菌はより早く進行します。
そのため虫歯を治療した歯よりも、虫歯になりやすくなります。
虫歯の再発を予防するためには、劣化しにくい治療を選択することや定期的なメンテナンスでの早期発見が重要ですが、一番大切なことは虫歯にしないようにすることです。
虫歯となった原因をしっかりと調べ対策をすることで、ご自身の虫歯リスクに合わせたオーダーメイドの対策を行うことが、ご自身の歯を生涯守ることに繋がります。
Q. 銀歯ってどれくらいもちますか?
A. 「虫歯をとって、銀歯を入れてから、もう治った」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、銀歯の寿命は短く約5年程度と言われています。
「銀歯の治療は海外ではほとんど行われない」、このことをご存知の方もいらっしゃると思います。
日本では国民皆保険制度で安く歯の機能の回復を行う必要があったため、銀とパラジウム、銅、金、その他の金属から安くて加工しやすい「銀歯」が出来ました。
銀歯には、保険治療なので安く治療できることと金属なので壊れにくい、というメリットがありますが、デメリットも多くあります。
一番のデメリットは、銀歯は虫歯になりやすいことです。
口腔内は唾液があり、水分が豊富にあるため銀歯が黒くなり、さびることがあります。
黒くなっているところは、唾液と反応して静電気を発します。
その静電気に汚れを集めるため、銀歯のさびた周囲に菌の塊のプラークが集まり、虫歯を加速させていきます。
また、金属であるため硬いため、被せをしている歯に力がかかり過ぎても金属がたわみ接着剤が溶けるだけで、内側の虫歯が全体に広がるまで外れないため気付かないことがあります。
場合によっては、歯が割れても金属が取れずに気付かないこともあります。
他にも、歯周病の悪化や金属アレルギーの可能性、審美障害などのデメリットがあります。
ですので銀歯を入れる際は5年程度の寿命と考えて、問題が起こる前に再度治療する必要性が高いことを覚えておかれる方がいいかもしれません。
今は保険治療でも歯の場所によっては「銀歯」以外のプラスチック素材の被せ物も使われていますが、保険治療では「最低限の機能を回復する」治療しか認められていないため、年月がたつにつれてヒビ割れや変色が起こります。
理想は再び虫歯にならないように予防することです。
虫歯になりにくい、銀歯以外のセラミック治療や、最小限の削る範囲ですむダイレクトボンディングなどの治療も大切です。
ですが、それ以上に大切なことは、食生活や虫歯菌、唾液の質などを含めて徹底的に虫歯になった原因を調べ、その人にとっての一番の原因を改善することが最も大切です。
そのために、当医院では食事のプロである管理栄養士、お口の汚れを効率よく取り除く方法を知っている歯科衛生士と歯科医師がチームで、患者様ごとに合わせたオーダーメードの治療を提案させて頂いています。
もし、「昔にした銀歯の治療が大丈夫か不安がある」、「虫歯になりやすい気がする」などのご不安がありましたら、ご相談して頂けると幸いです。
Q. 銀歯から金属アレルギーになることがあるって聞いたんですが・・・
A. ピアスなどの装飾品が原因になる皮膚からの金属アレルギーに比べて、口の中の金属が原因となる金属アレルギーは低いとされています。
少し前まではアマルガムと呼ばれる合金がよく使われていましたが、現在は一般的に「銀歯」と呼ばれている金属を使うことが多くあります。
日本人のお口の中には、「銀歯」が多く入っている方が比較的多い傾向です。
海外では「銀歯」を使用することは少ないので、「銀歯」が多い日本人に「銀歯」が原因で起こる金属アレルギーの問題が起こりやすい環境にあると言えるかもしれません。
日本で「銀歯」が多い理由としては、保険治療で「安く」、「最低限の歯の機能を回復する」必要があったため銀とパラジウム、銅、金、その他の金属から安くて加工しやすい「銀歯」が出来ました。
銀歯には、保険治療なので安く治療できることと金属なので壊れにくい、というメリットがありますが、デメリットも多くあります。
デメリットの一つとして、銀歯はさびることです。
口腔内は唾液があり、水分が豊富にあるため銀歯が黒くなり、さびることがあります。
黒くなっているところは、唾液と反応して静電気を発し、金属イオンが溶解します。
溶解した金属イオンがタンパク質とくっつくことでアレルギーの原因の抗原となります。
「銀歯」と接触するお口の頬の粘膜や、「銀歯」とは遠く離れた部分に発疹のように皮膚が赤く荒れたり、水膨れができたり、手足を中心に症状が出ることもあります。
お口の中や全身に何らかの症状が現れた場合は、金属アレルギー以外から起こる場合も多いですが、金属アレルギーのリスクが高い方がいます。
アレルギー性鼻炎や特定の食品に対するアレルギーなど、すでに別のアレルギー疾患を持っている方が金属アレルギーを発症する場合が多く、全体の70%が何かしらのアレルギーをお持ちの方とのデータがあります。
金属アレルギーを疑う場合は、皮膚科などでパッチテストなどの検査を行い、どの金属に対して金属アレルギーをお持ちかを調べます。
パッチテストとは、背中や上腕の皮膚表面に金属を含んだ試薬を貼付することによりアレルギー反応を起こすかどうかを調べる方法です。
金属アレルギーの原因となりやすい金属には、コバルト、ニッケル、クロム、パラジウム、亜鉛、銅、水銀などがあります。アマルガムや「銀歯」に含まれています。
今現在金属アレルギーの症状がない方も、花粉症が突然発症するように、アレルギーの原因物質の閾値を超えた時に突然発症することがあります。
特にアレルギー体質の方は、「銀歯」を使わない治療を行うことで、金属アレルギーのリスクを避けていただくことが大切になります。
当医院では、精密な適合のセラミック治療や最小限の削る範囲ですむダイレクトボンディング、保険のプラスチック素材の被せ物まで、患者様に合わせた治療をご提案させて頂きます。
もし、お口の中の「銀歯」についてご不安がある際は、ご相談いただければ幸いです。
Q. 保険で白い歯を入れることが出来ると聞いたのですが・・・
A. 歯の場所や噛み合わせにもよりますが、保険で白い歯とするための治療は可能です。
前歯や奥歯の小さい虫歯を取り除いた後に、コンポジットレジン充填(CR充填)という白いプラスチックを部分的に詰めることが出来ます。
前歯の虫歯が多い場合は、保険では金属の被せ物の表面にプラスチックを盛り付けた、硬質レジン前装冠という銀歯の表面を一部プラスチックで白く置き換えた被せ物を入れることができます。
保険の中でCAD/CAM冠という被せ物が、前歯や前から4、5番目の小さい奥歯(小臼歯)や前から6番目の奥歯(第一大臼歯)(上下4本第二大臼歯がある場合のみ)に使うことが出来るようになりました。
CAD/CAM冠はプラスチック素材の被せ物であるため、銀歯よりも被せ物の厚みを大きくしないと割れるため、歯を多く削る必要があります。
噛み合う歯とのスペースが少なければ適応できなかったり、被せ物の厚みを取るために神経を取る処置を行う場合がある場合があります。
保険治療では「最低限の機能を回復する」治療しか認められていないため、それぞれの治療にはデメリットがあります。
CR充填は全ての歯に用いることができますが、素材がプラスチックのため、他の材料に劣ります。
CAD/CAM冠はプラスチックの被せ物であるため年月がたつにつれてヒビ割れや変色が起こります。
詰める虫歯になりにくい、銀歯以外のセラミック治療や、最小限の削る範囲ですむダイレクトボンディングなどの治療も大切です。
Q. なぜか歯ぐきが黒いです。病気ですか?
A. 歯ぐきが黒くなる原因には、大きく4つあります。
一番多いものとして、メラニン色素の沈着により歯ぐき全体が茶色や紫色、赤黒く変色する場合があります。
日光を浴びたところや毎日強く擦れる肌にメラニン色素が沈着することで、日焼けをしたりシミができたりするように、歯ぐきも外からの刺激によりメラニン色素が沈着して、徐々に黒ずんでしまうことがあります。
特に強い刺激として、タバコに含まれるタール、ニコチンがあります。
またタバコのヤニにはプラーク(細菌のかたまり)や歯石を付着しやすくするため、歯周病の進行の原因にもなる可能性があります。
この場合は、歯肉ピーリングという治療を行います。
原因となるメラニン色素を取り除く専用溶液を使用し、痛みも少なく、ピンク色で健康的な歯ぐきになります。
施術の回数は通常2週間おきに2〜3回ほどで完了します。
ホワイトエッセンスの個室で心地よくお受けいただけます。
2つ目の原因として、銀歯や金属の土台がサビて溶け出し、その金属イオンが歯ぐきに移って沈着してしまうことで起こります。
「メタルタトゥー」とも呼ばれ、差し歯を入れた歯ぐきの縁の部分の歯茎が黒や紫に見えることがあります。
また、溶け出した金属イオンがタンパク質とくっつくことで、金属アレルギーの原因になる可能性があります。
この治療法として、薬剤等でメタルタトゥーの歯肉を除去することで、元のピンク色の歯ぐきに戻すことが出来ます。
また再発を防止するために、原因となる銀歯や金属の土台を取り除き、セラミッククラウン等の金属を使用していない治療を行うことが必要です。
3つ目の原因として、神経のない歯の変色が原因の場合があります。
神経が死んだ歯が黒ずんだ色に変色することで、その歯の色が歯茎から透けて見え、歯茎が変色したように見えることがあります。
この治療法として、神経が死んでいる歯の根の治療を精密にした上で、ウォーキングブリーチという着色した歯の内部の漂白を行います。
1〜2週間ごとに内部の漂白剤を交換することで歯を内部から白くすることが出来ます。
その後に、白い樹脂でフタを行なったり、セラミックの被せ物を装着することで、歯だけでなく、歯ぐきも健康的にすることができます。
4つ目の原因として、歯周病があります。
磨き残しの汚れ(プラーク)や歯石を長期間放置することで、歯茎の腫れ(歯肉炎)が進行し、歯を支えている骨が溶け出す状態(歯周炎)まで進行していきます。
歯周病が進んだ状態では、歯を支えている骨が溶けることで、本来歯茎や骨に覆われていたはずの歯の根の部分にまで歯石が付着します。
このような歯茎の下の歯石を歯肉縁下歯石と呼び、主に血液から歯石ができるため、黒色や茶色をしています。
この歯石の色が、歯茎全体を暗い色に変色して見える場合があります。
この治療法として、歯周病治療を徹底して行うことが必要です。
見えている部分の歯石を取り除くだけでは、一時的に歯ぐきの腫れが落ち着くだけしか期待できません。
歯石の原因となるプラーク(細菌のかたまり)を取り除きやすい技術や道具の使い方を身に着けることで、歯ぐき周りのプラークが減ります。
それにより、骨を溶かす毒素を作る細菌が減少し、歯ぐきが健康な状態に近づきます。歯ぐきとの隙間(歯周ポケット)が深い部分に対しては、麻酔下で歯根に硬く着いた歯石を専用の器具で取り除きます。
それでも取り残しがある深い歯周ポケットに対して、外科的な歯周病治療や再生療法などを行うことで、健康な歯周組織を回復します。
そのことにより、長期的に健康なピンク色の歯ぐきを保つことができる様になります。
それ以外にも、色素性母斑(ホクロ)や血管腫や、非常に稀ですが悪性黒色腫などの腫瘍、アジソン病やポイツジェガース症候群などの全身の病気が関係することもあります。
口腔外科で臨床経験があり、日本口腔外科認定医を取得しているので、それらの口腔外科疾患についてもご不安があれば、いつでもご相談ください。
Q. なんで「親知らず」って言うのですか?
A. 親知らずとは、前から7番目の奥歯のさらに奥にある8番目の奥歯のことを言います。
なぜ「親知らず」と呼ぶようになったのか、いくつか由来があります。
1つ目は、昔の日本では平均寿命が短かったため、親が亡くなった後に生えてくるので「親知らず」と呼ばれるようになったとの説があります。
2つ目は、一人前の人間として親元を離れてから生えるため、親が知らないうちに生えているという説です。
3つ目は、乳歯から生え変わることがないため、乳歯を永久歯の親に見立ててそれに対する乳歯がないことから「親知らず」と呼ぶようになったとも言われています。
欧米では親知らずのことを第3大臼歯(Third molar)または智歯(Wisfom tooth)と呼びます。
1人前の分別ができる年頃に生える歯ということで、智恵がついてきた頃に生えてくるため、「智歯」と名付けられたようです。
何れにしても、「親知らず」は遅れて生えてくるというところに最大の特徴があります。
「親知らず」は20歳前後から20代半ばに生えることが多く、30代から50代で生えてくる場合もあります。先天的に「親知らず」が何本かない人もいらっしゃいます。
「親知らず」を抜いた方がいいか、置いておく方がいいかは、その歯の生え方によって変わります。
まっすぐ生えて、しっかりと歯ぐきから歯の全体が出ているなら残す価値が高いといえます。
「親知らず」が腫れたことがなくても、知らないうちに「親知らず」の虫歯が手前の歯に移り大きな虫歯が広がっている場合もよく見かけます。
また、抜かないといけないぐらいの奥歯があるのなら、移植のドナー歯として使うことができる場合もあります。
矯正治療をする場合は、歯の位置や噛み合わせの関係で、「親知らず」を奥歯として使う治療計画を立てる場合もあります。
当院では、外科認定医であり、1500本以上の埋まっている「親知らず」を抜歯しいた経験があり、「親知らず」の移植も含めて多角的に診断することができるので、「親知らず」に対してご不安がある方、抜いた方がいいか、置いておく方がいいかについて確認をして欲しい方がいらっしゃいましたら、いつでもご相談ください。
歯科用CTも完備しているので、詳しく説明させて頂きたいと思います。
Q. 親知らずが生えてきたのですが、抜かないとダメですか?(その1)
A. 親知らずとは、前から7番目の奥歯のさらに奥にある8番目の奥歯のことを言います。
親知らずを置いておく場合、メリットとデメリットの二つの側面があります。
メリット
①親知らずがまっすぐ生え、噛み合う歯がある場合
歯が生えるスペースが大きく、親知らずがまっすぐ生えて噛み合う歯がある場合は、抜歯の必要はありません。
奥歯でしっかりと噛み合わせができているので、奥歯の力を分散するためにも親知らずが生えている意味が大きいです。
②ブリッジの土台や、入れ歯の金具をかけることができる
親知らずの手前の歯がなくなった場合に、親知らずと手前の歯を削って被せ物を作ることで奥歯の噛み合わせを回復することができます。
入れ歯を使っている場合も、親知らずに入れ歯の金具をかけることで歯ぐきにかかる力を親知らずの歯に力を分散することで、入れ歯が安定して痛みが出にくくなります。
③移植のドナー歯として使える場合がある
他の奥歯を抜歯しないといけない場合に、親知らずを移植できる場合があります。
大きな虫歯や歯が折れた、根っこが膿んで抜かないと行けない、など奥歯を抜かないといけない場合、歯を抜いた場合の治療としてインプラント、ブリッジ治療、矯正治療以外の他の治療法として、親知らずの移植(自家歯牙移植)を選択できる場合があります。
いくつか条件があり、移植する歯が健康であること(歯周病になっていないこと)、移植される親知らずの根っこが1本など複雑な形でないこと、歯と根の大きさが適合すること、年齢が若いこと、などの条件があります。
歯の移植は成功率がインプラントよりも悪く、長期的に安定がやや不安が残る、歯が死ぬため神経の治療が必要となる、治療期間が長期間になるなどのデメリットがありますが、自身の歯を使えること、歯根膜という歯の噛み合わせのセンサーが残ることができるなど、多くのメリットがあります。
④矯正治療で親知らずを噛み合う歯に参加させることができる場合がある
上の歯の親知らずの1本手前の7番目の歯の抜歯をした場合などに、矯正治療を行うことで、その7番目の位置に親知らずを動かすことができます。
奥歯を動かすため治療期間が長期間になり、矯正用インプラントスクリューなどの追加の矯正補助器具が必要となる場合があります。
しかし、自分の歯を、神経が生きた状態でそのまま使うことが出来ることは、何物にも変えがたいことです。
Q. 親知らずが生えてきたのですが、抜かないとダメですか?(その2)
A. 日本人のアゴはあまり大きくないため、一番最後に生えてくる奥歯である親知らずがまっすぐ生えることが出来ずに斜めや横向きに生えたり、一部が歯茎に隠れている場合、親知らずが生えてきたことに気付かない場合があります。
親知らずが原因で様々なトラブルが起こる場合があるので、少し説明をしたいと思います。
デメリット
①親知らずが原因で歯ぐきが腫れる
狭い場所に親知らずが生えてくる場合は、親知らずの歯の頭の部分が完全に生えきることが出来ずに、一部が歯ぐきに隠れている場合や、ほとんどが歯ぐきに隠れている場合があります。
親知らずも含めて、歯の頭の部分は歯ぐきとピタッとくっつきにくい性質があります。
そのため親知らずの歯の頭の部分と歯ぐきには常に隙間が空いており、そこに汚れや細菌が溜まりやすくなります。
歯ぐきに隠れている部分は酸素が少なく、歯ぐきから出血しやすいため、細菌にとって住みやすく、増えやすい最高の環境が整っています。
我々の体は免疫力により、そのような細菌の働きを抑えていますが、風邪を引いたり、身体が疲れたりすることで免疫が下がり、細菌の働きを抑えきれなくなります。
その結果細菌が増えることで、体の免疫反応が強く働いた結果であるウミが出たり、細胞の液(しん出液)が多く漏れ出ることで、歯ぐきが腫れます。
風邪が自然に治るように、ある程度の腫れは自分の免疫の力で治っていきます。
あまり細菌の活動が強くなりすぎると、細菌をやっつける抗菌薬などのお薬の力を借りないと、腫れが抑えられない状態になります。
一旦腫れが引いても、腫れやすい状態が変わっていないため、同じように腫れを繰り返す場合があります。
親知らずが骨の中に大きく埋まっている場合、下の顎の骨の中を走っている神経や血管(下顎管または下歯槽管)が近い場合や親知らずの根に挟まっている場合があります。
そのような親知らずに細菌が感染してかなり大きく腫れると、細菌が神経までたどり着くことや、腫れにより神経が押しつぶされることで、神経のしびれが出る場合が稀にあります。
その場合は、親知らずのある方の下の顎半分にしびれが出たり、下唇の半分にしびれがでます。
その神経は運動の神経ではなく感覚の神経なので、もし「しびれ」が出ても見た目が変わることはありません。
感覚が鈍くなるので、ずっと麻酔が効いているような感覚を感じたり、ご飯粒が付いても分かりにくくなる場合があります。
神経が腫れで押されていることで、しびれている場合は腫れが引いた時に治ることがあります。
細菌の炎症などで神経が痛んでいる場合は、神経は回復が遅い組織のため数週間から数ヶ月かけてしびれが治ってくる場合もあります。
親知らずが完全に骨の中に埋まっている場合にも、稀に骨を溶かしていくことがあります。
それは親知らずだけではなく、骨の中に埋まっている歯にも言えますが、歯の頭の部分の組織が膿の袋を作り、長年かけて大きくなることがあります。
これを嚢胞(のうほう)と呼びます。
基本的には悪性のものではなく、良性のものですが、痛みや腫れなどの症状が出てこないまま大きくなることがあります。
大きなレントゲンで確認ができるので、親知らずなどの骨に埋まっている歯がある方は、数年に一度は大きなレントゲンを撮影して、嚢胞(のうほう)が出来ていないか確認することをオススメします。
②親知らずの虫歯が横の歯に移る
親知らずが斜めに生えてきた場合、手前の7番目の歯(第二大臼歯)との間に隙間が出来て、そこに食べカスが溜まりやすくなります。
それが長期間続くと、虫歯菌により親知らずに虫歯が出来ます。
その部分と手前の歯の根本は非常に近いため、親知らずの虫歯が手前の歯の根本に移ります。
歯の根は硬いエナメル質で覆われていないため、虫歯の進行が非常に早く進み、気が付いた時には神経まで虫歯が進んでしまっている時もあります。
その場合は、治療しても虫歯を削った端が歯茎の奥深くになるため、その後の被せ物の適合が悪く、再び虫歯になり、抜歯に繋がるケースを見かけます。
③親知らずが顎の骨を溶かして歯周病が進む
親知らずの腫れを長年繰り返している人は、親知らずの頭の周りの骨が大きく溶けて無くなっている場合があります。
親知らずを抜くことで腫れの原因を取り除くことができます。
溶けてしまった骨はある程度までは周りの骨から自然に治って骨が出来てきますが、大きく骨が溶けている場合は完全には骨が治りきらずに、部分的に骨が不足している場所が残ります。その部分は歯周病が進みやすく、追加の治療が必要になる場合があります。
④矯正治療の邪魔になったり、後戻りを進める原因になる
下の親知らずが横や斜めに生えている場合、親知らずが生えてくる力が前方にかかることで下の前歯の歯並びが悪くなる(叢生:そうせい)可能性があります。
そのために、矯正前または矯正後に親知らずの抜歯をすることが多くあります。
これについては賛否両論ありますが、横や斜め目に生えている親知らずが腫れの原因等になる可能性があるため、抜歯をオススメしています。
上の親知らずについては、矯正治療の計画によっては活かす場合があるため、矯正治療について相談されてから抜歯を考える方が良いです。
上の7番目の歯が根管治療をしており、あまり長持ちが出来ない可能性がある場合や、大きく歯を後ろに動かしたい場合に上の7番目の歯を抜歯して上の親知らずを活かす場合などがあります。
矯正治療を考えられる可能性がある場合は、相談されることをオススメします。
⑤顎の骨の骨折のリスクが高くなる
口腔外科で勤務している時に顎の骨折の患者様を診ることがありますが、下のアゴの親知らずの部分で骨折が起こっているケースを見かけることがあります。
下のアゴの親知らずが生える場所の骨が薄くなるため、交通事故などの外傷の時に下のアゴの親知らずの部分で骨折が起こる場合があります。
親知らずを抜いた場合、半年から数年で歯を抜いた空間に骨が出来てくるので、骨の薄い部分が骨で埋まります。
アゴの骨折のリスクを大きく下げる訳ではないかもしれませんが、アゴの骨の骨折の時に親知らずが関係すると親知らずの細菌の感染リスクがあるため複雑な治療計画になる場合があります。
余計なリスクを下げるためにも、抜歯をしておくのも一つだと思います。
親知らずの抜歯のメリット、デメリットはそれぞれあります。
お口の環境は一人ひとり異なります。
不安なことのご相談でも構いませんで、いつでもご相談頂ければ幸いです。