こんにちは。「道頓堀キムラ歯科クリニック」の院長の木村沢郎(キムラサワオ)です。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか?
私のゴールデンウィークは、2歳の長女を妻に預け、7歳の長男と5歳の次男と一緒に生駒山麓公園のアスレチックをしてきました。難しいアスレチックにも、「こんなの簡単!」といってなんでも挑戦する子供の姿を見て、お父さんとしても負けずに色々なことに挑戦したいと思った連休でした♪(実際は簡単ではなかったみたいですが、次男は6歳になったら出来ると言っていました(笑))
前回は、歯の根の奥の病気である、「急性根尖性歯周炎」の時の特別な対処方法についてお話をしました。
このような歯は、過去に歯医者さんで神経の治療をしたことがある場合がほとんどです。
どうして、神経の治療をした歯が痛むのですか?
歯の根の奥の病気は、痛みなどの症状がほとんどない「慢性根尖性歯周炎」か、痛みが急性化している「急性根尖性歯周炎」に分かれます。
このような歯は、過去に歯の根の治療をしたことがある場合がほとんどです。
根の治療をしたのに、なぜ悪くなるのでしょうか?
それは、虫歯の取り忘れがある、
または、歯の根の治療をした時に歯の内部に菌が侵入している場合がほとんどです。
歯の根の治療をしても、「しみる」、「ズキン」とする独特な痛みは感じなくなりますが、虫歯が進行しなくなったわけではありません。
銀歯などの被せ物をしていても、神経がある歯と同じように虫歯は進みます。むしろ、神経がある歯よりも虫歯には弱くなっています。
根の治療をした歯が悪くなる原因は3つあります
①虫歯治療の時に細菌の取り残しがある場合
②被せ物の隙間から、細菌が侵入する場合
③初めての根の治療の時に唾液などから細菌が入り込み、時間とともに増えていく場合
1つ1つ原因について詳しく見ていきましょう。
原因①「虫歯治療の時に細菌の取り残しがある場合」
治療をしていると、虫歯の取り残しを疑う時が多くあります。
CR(コンポジットレジン:小さな虫歯の治療の際に、光で硬化する白い樹脂で詰める治療)の下の虫歯や、1年前に治療したにも関わらず内部で虫歯が大きく広がっている場合などをよく見かけます。
なぜ、虫歯の取り残しが起こってしまうのでしょうか。
その原因の一つとして、保険診療の限界があるかもしれません。
虫歯をしっかりと取り除こうと思うと、適切な道具を用いて、手間と時間をかけないといけません。
しっかりと虫歯を取るためには、『う蝕検知液』と『拡大視野での治療』、この2つがなくてはならない必須アイテムです。
「う蝕」とは「虫歯」のことで、『う蝕検知液』とは虫歯に感染して脆くなった歯を染める検査液のことです。
この『う蝕検知液』を使わないで虫歯を削ると、虫歯を削り残したり、不必要に歯を削ってしまうことになります。
勤務医時代に他の歯科医院で週1回アルバイト勤務をしてたのですが、そこの歯科医院はチェア数が10台以上もある大型の歯科医院にも関わらず、う蝕検知液は2つしかありませんでした。アルバイト時には私が常にう蝕検知液を占有していたのですが、なぜかいつでも使うことができました^^;
その歯科医院では担当ドクター制ではなく、手が空いた先生が次々と患者さんを見ていく方針でした。そのため、前回の治療が他の先生が担当されていることも非常に多くなります。
歯の根の治療(根管治療)の続きを行う場合は必ずう蝕検知液を使っていたのですが、何故かう蝕検知液で染まる部分のある歯が多くありました。
虫歯を取り除いてから根管治療をしないと内部の細菌を根の奥に押し出すだけなので、何回根の治療をしても治療効果はあまり期待できません。
『虫歯=虫歯菌の細菌感染』
⬇️
『虫歯の感染した部分を完全に取り除く』
これが、虫歯治療でも根管治療においても基本的な治療になります。
その上で、より精密な歯の形成や根管の拡大、緊密な根管充填が治療の成功率を左右します。
う蝕検知液を使わない歯科治療が多くあることを知ることが出来た、貴重な経験でした💧
当院では、う蝕検知液を使った虫歯除去は当然ですが、マイクロスコープでの拡大視野下で治療を行います。
マイクロスコープの画面の録画を行なっており、治療後に患者様と虫歯の状態を確認して頂いています。う蝕検知液を使った虫歯治療を一緒に見ていただき、虫歯の進行度合いを確認していただいています。
歯髄が近い部分の虫歯を削っていくと、神経の部分が毛細血管の色が透けて見えることで薄いピンク色に見える場合があります。う蝕検知液には赤色と青色の2色がありますが、神経が近い部分の色と区別するために、当院ではカリエスチェックの青を使用しています。
神経の近い部分を触る時は、マイクロスコープで大きく拡大した視野で、先端が細いスプーン状になっている器具で(スプーンエキスカベーター)慎重に虫歯を除去していきます。
原因②被せ物の隙間から、細菌が侵入する場合
大きな虫歯を治療した後には、大きな被せ物(クラウン)を入れることで噛む力に対応できるようにします。
苦労して治療した歯ですが、残念ながらその被せ物は一生持たないことも多くあります。
被せ物と歯とは必ず隙間があります。その隙間を埋めている接着剤が虫歯菌により溶かされることで、細菌が侵入し、被せ物の内側から虫歯が進行します。
その歯の残っている歯の量や、力のかかり方、虫歯のなりやすさ、そして被せ物の種類の違いで、その歯がどれくらい長持ちするかどうかが左右されます。
保険治療の銀歯や保険治療のCAD/CAM冠というプラスチックの被せ物は汚れが付着しやすい素材です。またCAD/CAM冠は隙間が大きく適合が悪いため、どちらも虫歯になりやすい性質があります。
セラミックの被せ物を精密な治療で行えば(治療のクオリティが大切です)、セラミックと歯を被せ物の隙間を非常に少なくすることが可能になります。
またちゃんとしたセラミック(ハイブリッドセラミックはレジンの一種で、プラスチックの被せ物です)は、表面が滑沢なため汚れが非常に付着しにくい素材です。そのため、細菌の塊であるプラークが付着しにくいため、長持ちがしいやすい素材と言えます。
青山貴則:臼歯部修復物の生存期間に関連する要因(論文(1))によれば、銀歯の被せ物(メタルクラウン)の生存率は5年で74.8%、10年で55.8%とのデータがあります。
セラミックの被せ物については、Survival Rate of Resin and Ceramic Inlays, Onlays, and Overlays (論文(2))の中で、生存率が5年で92~95%、10年で91%とのデータがあります。
被せ物をセラミックにすることで、再治療の時期を大きく遅らせることが可能になります。再治療の回数を出来る限り少なくすることが、その歯を長持ちさせるために非常に重要です。
次回は、根の治療をした歯が悪くなる原因の3番目、「初めての根の治療の時に唾液などから細菌が入り込み、時間とともに増えていく場合」について、詳しくお話をしたいと思います。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
道頓堀キムラ歯科クリニック
院長 木村沢郎
引用文献
論文(1):青山 貴則, 相田 潤, 竹原 順次, 森田 学:臼歯部修復物の生存期間に関連する要因.,口腔衛生会誌 58(1): 16-24 2008.
論文(2):Survival Rate of Resin and Ceramic Inlays, Onlays, and Overlays: A Systematic Review and Meta-analysis 2016 Aug;95(9):985-94. doi: 10.1177/0022034516652848. Epub 2016 Jun 10.