(歯医者さんの麻酔の痛みを最小限に抑える方法Part4)
こんにちは
大阪難波駅の25番出口から徒歩2分にある、
「道頓堀キムラ歯科クリニック」の院長の木村沢郎(キムラサワオ)です。
2月に入り、気持ち暖かい日が続いた後にグッと冷え込む日が続いたりと、
体調を崩しやすい日々が続いていますね。
7歳の長男も体調を崩しているので、みなさんも体調管理にお気を付けくださいね。
前回は麻酔が効きにくい状態についてお話をしました。
特に下の奥歯に強い腫れや痛みが出ている時には、非常に麻酔が効きにくくなるというお話でした。
「痛くなる前に、歯医者さんに行った方がいいことは分かっているけど・・・」
「忙しくて、痛みが我慢できなくなるまで、歯医者さんに来れませんでした・・・」
という方もいらっしゃると思います。
確かに痛みが出る前に、虫歯などの早期発見や早期治療が理想です。
そうは言っても、痛みが出てから歯医者さんに行かれる場合もあると思います。
そんな時に、知っておくとタメになる情報をお伝えしたいと思います‼️
どうしても麻酔を効かせたい時の、『特別な麻酔』の方法
他の痛みはガマンできるけど、歯の痛みだけはガマンできない!という人は多いですよね。
歯の痛みの中で、特に痛みが強いものとして、
「急性歯髄炎」と「急性根尖性歯周炎」の2つがあります。
それぞれで対処方法が大きく変わります。
まずは、炎症があるけどしっかりと麻酔を行う必要があるケースについてお話をしたいと思います。
急性歯髄炎とは?
①急性歯髄炎:虫歯などで神経に強い炎症が起こっている場合
「ズキズキ痛い!!」
「冷たい水を飲むと、「ズキンッ」と痛んで、しばらく痛みが引かない!」
こんな症状の時には、急性歯髄炎を疑います。
神経まで届くほどの大きな虫歯や歯が割れる(破折)ことで、歯の内側の神経に強い刺激が伝わり、
神経に強い急性炎症が起こることで強い痛みが出てきます。
この痛みの原因は、歯の内部の神経に強い炎症が起こることで、歯の神経(歯髄)が充血し、
血管が拡張します。
それにより歯の神経の空間(歯髄内)の内圧が高くなることで、神経の線維が押されることで強い痛みが出ます。
心臓のドクドクとする動きに合わせて歯髄の血管も拡張するため、
ドクドクという心臓の動きに合わせた痛み(拍動痛)を感じます。
「なんで夜に歯が痛くなるの?」
この拍動痛は、血管が膨張することで痛みが強くなります。
交感神経と副交感神経が血圧や体温などのコントロールに大きく関わっています。
夜間や入浴時などのリラックスした時間には副交感神経が優位になりますが、
それにより血管が膨張して血流が促進されます。
また入浴や運動、お酒で血流がます行為も同様です。お風呂はシャワーを短時間浴びいるぐらいにしておきましょう。
急性歯髄炎では神経の治療を優先
このような神経の炎症で激痛が出ている場合は、原因の神経の治療が基本的には必要になります。
「激痛」「下の奥歯」「急性歯髄炎」
この3つが重なる場合は、通常の麻酔ではまず効果が弱いです。
このような状態で歯医者さんの治療をされことがある方は、
「麻酔が全然効かないのに治療されました」
「麻酔が効きにくい体質と歯医者さんに言われました」
「もう二度とあんな痛みはイヤです!」
と言う方が多くいらっしゃいます。
確かに、麻酔が効きにくいのは間違いありません。
ですが、麻酔方法を組み合わせることによって痛みをコントロールすることは可能です。
1.伝達麻酔と歯根膜麻酔を併用する
一般的な麻酔との違い
一般的な虫歯の治療で行う麻酔は、「浸潤麻酔」という方法で行います。
麻酔を行う際は、歯の神経に直接麻酔をすることが出来ません。
歯の根の先端には約0.3mmほどの穴が開いています。
脳から走行している神経は顎の骨の中を通り、根の先端の細い穴から血管などと一緒に歯の内部に入り込んでいます。
歯の根は、歯根膜という薄い線維性の組織に覆われた状態で、顎の骨の中に埋まっています。
決して、歯茎だけに埋まっている訳ではないんです!
骨の中にある歯の神経に麻酔を効かせるための方法が、麻酔方法の違いになります。
①浸潤麻酔=顎の外側から骨に麻酔をしみこませて、顎の骨の中にある歯の神経や周囲の組織に麻酔を効かせる方法
虫歯などの歯科治療で一般的に行う方法
歯茎に注射を行うと、その部分から麻酔液が周りの組織に浸透していきます。
骨の表面には細かい穴(骨小孔)が開いているため、ゆっくり骨の中にも麻酔液は浸透していきます。
骨の中から歯の根の周囲にある神経に働きます
そして歯の内部に入り込む神経に麻酔液が働くことで、「浸潤麻酔が効いている」状態になります。
下の奥歯では、頬側の硬い骨(皮質骨)が非常に分厚く、歯の根の位置も舌側に位置しているます。
浸潤麻酔を行う場合も麻酔の量を増やすことも大切ですが、通常の頬側からだけでなく舌側や骨小孔が多い歯のきわに近いところ(歯頸部や歯間乳頭部)に麻酔を行うことで、歯の根に届く麻酔液の量を多くすることが大切です。
②歯根膜内麻酔=歯の根の周囲の歯と骨をつなぐ薄い組織である「歯根膜」に麻酔液を注射し、
歯根膜をつたって歯の根の先の神経に麻酔を効かせる方法
歯根膜は非常に薄く、厚みは0.2~0.3mmほどです。
その狭い部分に麻酔を行うので圧が強くかかりやすく、その分麻酔の時にグッと押されるような痛みが出ることがあります。
また歯根膜はセンサーの役割を持っており、「歯ごたえ」を感じる組織であるため、咬むと歯が浮くような違和感が残ることがあります。
しかし、1~2日程度で改善しますので、ご安心ください。
下の奥歯での麻酔では、重要な麻酔方法になります。
歯根膜麻酔自体が痛みを与えやすいので、しっかりと浸潤麻酔を行ない痺れた後に行うことで、麻酔時の痛みを抑えることが出来ます。
③伝達麻酔=脳から歯の歯髄まで走行している神経が枝分かれする前の途中の部分に麻酔をすることで、広い範囲にい麻酔を効かせる方法。下の親知らずの抜歯でよく用いられる。
歯医者さんが使う伝達麻酔には、下顎孔伝達麻酔、大口蓋口伝達麻酔、後上歯槽神経伝達麻酔などいくつかありますが、
麻酔が効きにくい下の奥歯の治療の際に「下顎孔伝達麻酔」を用いることがよくあります。
「下顎孔伝達麻酔」ってなんですか?
下の親知らずの抜歯の時に、よく用いられる伝達麻酔の一つです。
下顎の骨の中に入る前の神経を麻酔を行うことで、下顎の左右半分(麻酔を行った側)と下唇の左右半分、舌の左右半分を麻酔させることが出来ます。
細かくは、右の奥歯の頬部は神経の走行の関係で麻酔されません。
通常よりも太くて長い針を用いて、喉の奥に麻酔を行います。
通常の浸潤麻酔では2~3時間程度麻酔が効いていますが、伝達麻酔では4~6時間程度麻酔が効くことがあります。
しっかりと麻酔が効いてくれるため、下の奥歯で痛みが出ている場合は必須になってくる麻酔と言えます。
ただ、あまり下顎孔伝達麻酔を普段から行う歯医者さんは少ないようです。
その理由の一つとして、大学での歯科教育の中で伝達麻酔を学ぶ機会が非常に少ないことが関係しているかもしれません。
学生の時の伝達麻酔の相互実習の一回しか伝達麻酔を行ったことがない歯医者さんは多くいらっしゃいます。
私は大学病院の歯科口腔外科に4年間勤務しいていました。
そのため、毎日のように親知らずの抜歯を行い、その度に下顎孔伝達麻酔を行っていました。
そのため日常の臨床でも必要な際は、下顎孔伝達麻酔を行うことが多くあります。
④髄腔内麻酔=歯の内部の神経に直接麻酔を効かせる方法
どうしても麻酔が効かない時の最終手段として用いられることがあります。
麻酔を行っても歯を削る時の痛みが残っている場合、神経のある空間(歯髄腔)まで削る機械で穴を開け、
その穴から見えている歯髄に直接麻酔を行う方法です。
「歯医者さんでの麻酔が全然効かなかった!」、「麻酔の時に物凄い激痛を感じた!」
という辛い経験をされた方がされた麻酔は、もしかしたらこの髄腔内麻酔かもしれません。
直接神経に麻酔を効かせるので、一瞬「ズキッ」という激痛の後に、すぐに麻酔が効いてくるのが特徴です。
強い痛みを与えてしまうので、正直できる限り避けたい麻酔と言えます。
下顎孔伝達麻酔と浸潤麻酔、その後に歯根膜内麻酔を行いしっかりと麻酔を効かせると、
ほとんどの方が痛みをコントロールされた治療が可能です。
それでも痛みが少し認める時は、追加で歯根膜内麻酔や上部からの浸潤麻酔を行います。
稀にそれでも痛みが少し残る場合があります。
その場合は、髄腔内麻酔を行います。
「髄腔内麻酔って激痛って聞いたんですが・・・」
ここまでしっかりと麻酔を行っているので、神経の近くを削っていても弱い痛みが残っている程度です。
髄腔に小さな穴をあけ、「一瞬だけチクっとしますね」とお声掛けを行いその穴から麻酔液を弱い圧で少しずつ注射を行います。ここまですると、治療中に痛みを感じることはほとんどありません。
ただ、炎症が強い歯では出血によって麻酔液が流れやすいため、
麻酔効果が切れるのが通常よりもかなり早いです。そのため、追加の麻酔は状態を見て行っていきます。
今回は、急性歯髄炎で痛みが強い場合に用いる麻酔法についてお話をしました。
次回は、もう一つの歯の激痛の一つの「急性根尖性歯周炎」の時の痛みについてのお話をしていきたいと思います。
長文を最後までご覧くださり、ありがとうございました
道頓堀キムラ歯科クリニック
院長 木村沢郎